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林田力『東急大井町線高架下立ち退き』(Driving out Inhabitants under the Elevated Railway of Tokyu Oimachi Line)は東急電鉄による東急大井町線高架下住民追い出し問題を取り上げたノンフィクションである。東急電鉄は東急大井町線高架下(ガード下)住民に一方的な立ち退きを要求している。Tokyu Corp. is driving out inhabitants and tenants under the elevated railway of Tokyu Oimachi Line.

東京都品川区の東急大井町線の高架下の住民らは東急電鉄(東京急行電鉄)に立ち退きを迫られている。十分な生活保障もなしに長年住み慣れた家を追われ、路頭に迷う苦境に追い込まれようとしている。住民らは東急電鉄の住民無視の姿勢を強く批判する。

東急電鉄は大井町線高架下の住民らに突然、契約解除を通告した。しかも、僅か半年以内の立ち退きを迫る。住民らにとっては寝耳の水の事態という。賃貸借契約は長年、習慣的に自動更新されてきたためである。

東急が住民達に立ち退きを求める理由は、高架橋の耐震補強工事である。1995年の阪神淡路大震災を踏まえ、国土交通省は1995年と2001年に耐震補強工事の通達を出した。それに応えることを根拠とする。しかし、これまで東急電鉄は住民に通達を知らせず、不意打ち的に契約解除を通告した。

住民らは「長年平穏裡に大家と店子と言う関係を築いてきた信頼関係を土足で踏みにじり、ふいの平手打ちを食らわせるような東急のやり口に、住民側が強く反発するのはいわば当然」と語る。ある住民は「高架下で60年も生活をしてきたが、一方的に出て行けと言われても行き先がない」と語る(「 東急立ち退き要求に高架下住民『ついの住み家 一方的に奪うのか」赤旗日曜版2011年12月11日)。

3年前に自宅を改修した住民は「高架下の自宅を建て替える時に、東急は一言も耐震化計画の事を触れなかった。何十年もかけて苦労して貯金し、自宅を改修した今になって、出て行けと言われても困る」と述べる(なかつか亮「週刊区政報告」343号、2011年12月25日)。

住民によると、東急側の交渉役の従業員は「事前に知らせると住民側が立ち退き交渉を邪魔するために、種々悪質な妨害工作をする時間を与えることになるから、それを避けるために事前通告をしなかった」と開き直ったという(「東急電鉄の非情に対して訴える」『【東急】高架下のホームレス化を強いられる住民【大井町】』2011年7月6日)。

自社の利益しか考えない東急不動産だまし売り裁判と共通する不誠実さである。これは東急リバブル東急不動産が不利益事実を隠して新築マンションをだまし売りした事件である(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。住民の過酷な状況への想像力と思いやりが欠けている。住民の生活基盤を破壊する追い出し行為が行われている点では住まいの貧困問題と捉えることもできる。
http://hayariki.net/tokyu/ohimachi.html
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東急は非道(撮影:林田力) 林田力『東急大井町線高架下立ち退き』(Driving out Inhabitants under the Elevated Railway of Tokyu Oimachi Line)は東急電鉄による東急大井町線高架下住民追い出し問題を取り上げたノンフィクションである。東急電鉄は東急大井町線高架下(ガード下)住民に一方的な立ち退きを要求している。Tokyu Corp. is driving out inhabitants and tenants under the elevated railway of Tokyu Oimachi Line.
高架下住民は十分な生活保障もなしに長年住み慣れた家を追われ、路頭に迷う苦境に追い込まれようとしている。住民らは東急電鉄の住民無視の姿勢を強く批判する。東急電鉄は大井町線高架下の住民らに突然、契約解除を通告した。しかも、僅か半年以内の立ち退きを迫る。住民らにとっては寝耳の水の事態という。賃貸借契約は長年、習慣的に自動更新されてきたためである。
ここには東急不動産だまし売り裁判と共通する住民生活無視の実態がある(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』)。二子玉川ライズ問題と共通する街壊しの実態がある(林田力『二子玉川ライズ反対運動』)。『東急大井町線高架下立ち退き』では東急の抱える他のトラブルや東急の体質の分析も収録した。
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東急電鉄が大井町線高架下住民を追い出し
東急大井町線高架下追い出しは居住の権利侵害
東急大井町線高架下追い出しは住み続ける権利侵害
東急大井町線高架下住民が東急電鉄への怒りを表明
木星通信が東急大井町線強制立ち退き問題を報道
東急電鉄株主総会で二子玉川と大井町住民が共闘
住民反対運動を招く東急電鉄の不誠実
東急電鉄の不誠実さの背景
東急電鉄が静岡のニュータウン管理組合と係争
東急電鉄対ニュータウン管理組合訴訟判決に住民失望
東急電鉄対ニュータウン管理組合訴訟判決は住民自治の脅威
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東急電鉄・東急不動産の渋谷再開発は街壊し
東急電鉄の宮下町アパート再開発に批判
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東急グループはハイエナ資本主義の尖兵
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東急電鉄の女性専用車両に批判集中
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暴力団関係者が東急電鉄株を買い付け
東急電鉄すずかけ台変電所建設反対運動
東急電鉄の大井町線中延駅前鉄道用地転売に批判
昔も今も空気が読めない(KY)二代目
「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」は東急電鉄・東急不動産の分譲マンションであるが、オカルト話は他の東急不動産の分譲マンションにもある。鎌倉市由比ガ浜のシーサイドコート鎌倉若宮大路では目に見えない住人と一緒に住むことになるという。シーサイドコート鎌倉若宮大路は鎌倉時代以来、墓地や処刑場、戦時の死体捨て場として使われた土地に建てられている。実際、マンション建設前の発掘調査では大量の人骨が出土した。刀創・刺創・打撲創のある人骨も出土し、戦死者と見られている。

シーサイドコート鎌倉若宮大路の建設地は関東大震災では津波に洗われた場所でもある。そのような土地であるため、ずっと更地であった。地元住民は「手を付けてはいけない土地」「人が住む場所ではない」と語る。マンション建設時には「あんな土地にマンションを建てるなんて世も末」との声も出た。
http://hayariki.net/2/45.htm
最初の異変はマンションの広告チラシを配布するアルバイトに起きた。その人物はマンション建設地の由来を知らなかったが、昼過ぎから胃が重たくなるような感覚になり、倦怠感に襲われたという。心臓に流れ込んだ血が冷たくなり、思考が脳で凍りついた。
http://hayariki.x10.mx/mccmccmcc3.html

勤務前に「現地で大量の人骨が発見されたらしいよ」と言われた同僚も同様の症状に見舞われた。そこで彼も建設地の由来を知ることになる。最初は都市伝説のようなものと考えていたが、体調を悪くしてから急激に罪悪感が強くなった。最後は仕事しているフリだけで、ほとんどチラシを渡さなかったという。

マンション住民にも怪現象を指摘する声がある。階段を上ると自分の前に誰かが上っているような感覚があるが、誰の姿も見えず、足音も聞こえない。自分一人しかいないのに夜中に目を覚ましたら目の前に顔があって自分を見つめていた。誰もいない隣の部屋に人影を見た。急にテレビの電源が入った。毎晩、自分の部屋に入ってドアに鍵をかけ、未解決の恐怖に心を惑わされながら就寝する住民もいる。

シーサイドコート鎌倉若宮大路の販売時のキャッチコピーでは「思い出」が強調されていた。「思い出の場所が、永住の地となる」「思い出がよみがえるあの場所に」「鎌倉を愛する人々の思い出がいっぱい詰まった道」などである。鎌倉という歴史ある街に因み、「思い出」を強調したと推測されるが、葬られた人々の怨念も思い出されたようである。
東京都世田谷区の超高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」で起きた飛び降り自殺が龍神の祟りであると近隣住民の噂になっている。
http://hayariki.jakou.com/pj4.html
飛び降り自殺当時の「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」は竣工したばかりで、未だ販売中の住戸も多い。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」は内装や植栽がイメージ写真とあまりに違うために話題になった。

飛び降り事件当時、何かが落ちたような不気味な鈍い音を聞いた住民もいる。夜中の11時くらいに救急車やパトカーがサイレンを鳴らして到着するなどの騒ぎになっており、多くのマンション住民や近隣住民の知るところとなった。また、事件後しばらくは現場に飛び散った血痕やタイルの破片が残されており、目にした住民も多い。

デベロッパーや管理会社は事件を公表していないが、人の口に戸は立てられない。インターネットの検索エンジンでマンション名を入力すると「飛び降り」などの不吉なキーワードがサジェストされるほど拡散した。購入を見合わせた検討者も存在する。
http://www.facebook.com/riki.hayashida

ある近隣住民は「龍神の祟りではないか」と語る。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」は人工地盤の上に築かれている。周辺住民からすればマンションの敷地自体が巨大な壁になる。これは集中豪雨時などに雨水を堰き止め、周辺被害に洪水被害をもたらすとして周辺住民から反対運動も起きている(林田力『二子玉川ライズ反対運動』)。

一方で水の通り道を堰き止めるために龍神の怒りもかったのではないかと前述の住民は説明する。この土地では過去にも龍神の怒りが伝えられている。マンション建設地の近くには1960年代まで池があったが、宅地拡大などを理由に埋め立てられた。ところが、埋め立て後に火災などの災害が相次いだ。その後、地元の古老の夢枕に龍神が現れ、「小さな祠に祀ってほしい」と告げたため、龍神を祀る祠を建てたという。

加えて二子玉川ライズの建設工事着工と前後して、デベロッパーの創業者一族の一人・五島哲が59歳で急死した。五島哲は宿泊先のホテルの浴槽で死亡しているところを発見された。浴槽という水に縁のある場所で死亡していたことから、これも龍神の祟りではないかと住民は分析する。

そのマンションでは夜中に何かが階段を一段ずつ転がり落ちていくような特異な音を耳にした住民もいる。霊感の強い近隣住民はマンションの敷地に入ると、正常な馴染み深い世界から唾棄すべき世界、尋常ならざる驚異の土地に入り込んだ気がするという。マンションを検討する際は祟りの有無も調査した方が良い。
脱法ドラッグの弊害は麻薬や覚せい剤などの違法薬物と変わらない。身体に有害な作用を及ぼす物質が含まれているおそれが高く大変危険な薬物である。死亡例や重い後遺障害など健康被害が多発している。脱法ハーブを吸引して急性薬物中毒となり、病院に搬送される事例が相次いでいる。17歳少女が新宿で脱法ハーブを吸引し、吐き気を訴えて搬送された。
http://www.hayariki.net/0/faqindex.htm
オフ会で一人に合法麻薬を吸引して病院に搬送された愚かな事例もある。あるオフ会参加者が唐突に「新宿で買った合法麻薬をやろう」と言い出した。他の参加者は「止めた方がいいですよ、絶対」と良識的な助言をしたが、無視された。その麻薬は先端に付けて吸う物なのに、いきなり鼻から吸引した。すぐに意識を失い、倒れたままで嘔吐した。救急車で緊急搬送された。参加者の一人から「どうしようもないバカだな」と評された。

脱法ドラッグにも依存性や中毒性があり、最後は廃人になる。脱法ドラッグには幻覚症状や興奮作用があり、犯罪の原因にもなる。ヤンキーの暴走により多くの死傷者が出た事件でも暴走したヤンキーが薬物を吸引していたと指摘されている。
http://www.hayariki.net/0/8.htm
脱法ハーブは「合法ハーブ」と称されるが、この言葉は欺瞞的である。脱法ハーブは法律に適合しているという意味での合法ではない。法律の穴を潜り抜けようとする文字通りの脱法ハーブである。故に「合法ハーブ」という言葉自体の使用を避けるべきであるが、合法ハーブで調べる人もいるために併記している。

東京都は以下のように指摘する。「『合法ドラッグ』『合法ハーブ』『脱法ドラッグ』『脱法ハーブ』と称して販売されている製品であっても、どのような物質が含まれているか不明な製品が多く、合法であるとは限りません」(東京都福祉保健局「指定薬物を含有する違法ドラッグの発見について~麻薬・大麻・覚せい剤類似成分を検出~」2012年2月28日)。現実に合法ハーブとして販売されているドラッグが薬事法違反の違法ドラッグであったという事例が出ている。

多くの脱法ドラッグ店では「お香」として販売し、「人体吸引用ではない」と言い訳するが、言い訳として成り立たない。東京都は「決して摂取又は使用しないでください。」「身体に有害な作用を及ぼす物質が含まれているおそれが高く大変危険です。絶対に使用しないでください。」と摂取だけでなく、使用も危険とする(東京都福祉保健局「指定薬物を含有する違法ドラッグの発見について~麻薬・大麻・覚せい剤類似成分を検出~」2012年2月28日)。
ボワロ&ナルスジャック著、大久保和郎訳『技師は数字を愛しすぎた』(創元推理文庫)はフランスの推理小説である。パリ郊外の原子力関連施設で技師が殺害され、核燃料チューブがなくなった。この核燃料チューブは爆発と放射能汚染でパリ市の多くの部分を壊滅できるものである。ところが、犯行現場に人が出入りした形跡がない。密室ミステリーである。

第二次世界大戦の記憶も残っている1958年に出版された書籍であるが、福島第一原発事故を抱える現代日本で読めば緊迫感は一層高まる。福島第一原発事故は原子力発電の安全神話を壊滅させた。確かに原子炉が相対的に頑丈にできていることは認めてもいい。しかし、どれほど格納容器が頑丈であろうとも、外部からの電源供給がなくなれば危機的状況に陥ることが福島原発事故で判明した(林田力「福島第一原発事故で世界中に脱原発の動き」PJニュース2011年3月23日)。

いくら格納容器を頑丈にしても安全は確保できない。現在の福島原発事故でも原子炉よりも核燃料プール倒壊の危険性が注目されている。その意味で巨大な施設を破壊するというような壮大なスケールではなく、人が抱えて持ち運べるような核燃料チューブで恐怖を描く視点は興味深い。

また、『技師は数字を愛しすぎた』が放射能汚染の危険性を抽象的に描いている点も興味深い。目に見えず、臭いもない放射能の害は想像しにくい。『技師は数字を愛しすぎた』でも深刻な事態になる可能性がある状況でも、現実感の乏しい漠然とした不安になっている。福島事故後に放射能汚染に敏感になった「放射脳」と揶揄される連中にとっては『技師は数字を愛しすぎた』の登場人物の言動は鈍感に見えるだろう。

しかし、福島第一原発事故後の日本でも放射能の害をめぐって情報が錯綜した。不安ばかりが一人歩きした面もある。意図的に危険性を煽るデマゴーグに乗せられたとの反省もある。その意味で『技師は数字を愛しすぎた』で描かれた漠然とした不気味さや不安感が正味のところとなるだろう。

肝心の密室殺人であるが、ステレオタイプなミステリー観ではルール違反と受ける向きもあるかもしれない。犯行時には誰も部屋に入らず、誰も部屋から出なかった。不可能殺人であり、捜査は行き詰まる。そこで発想を転換する。誰も部屋に入らずに誰も部屋を出ない状態での殺人が不可能であるならば、その前提を疑ってみる。この発想は新鮮である。(林田力)
http://www12.atpages.jp/~hayariki/haya/1/faqindex.htm
マーセデス・ラッキー『魔法の代償』は架空の王国ヴァルデマールを舞台としたファンタジーである。原題は『Magic's Price』。ヴァルデマール国を中心とした壮大な物語「ヴァルデマール年代記」の一冊で、伝説的な「魔法使者」ヴァニエルの生涯を描く「最後の魔法使者」三部作の完結編である。ヴァルデマールは中世ヨーロッパのような社会であるが、特別な素質を持った人々が魔法や超自然的な能力を使える世界である。

ヴァルデマールの国王ランディルは原因不明の病に侵されていた。あらゆる治療に成果はなく、若き詩人ステフェンが国王の苦しみを和らげるために連れてこられた。ステフェンの歌声によって国王の苦しみが薄れる。

そしてヴァニエルとステフェンは互いに惹かれあう。上巻は二人のじれったい恋の駆け引きに多くの紙数が割かれている。最後を除いて魔法を駆使した緊迫するバトル要素は乏しい。ヴァルデマール国の日常が綴られているが、その内容には現代社会にも通じるものがある。

第一に過労死である。ステフェンは類い希なる能力のために治療者達の研究材料になるが、治療者達に自分の能力を示し続けて精力を消耗してしまう。優れた能力者でも有限という点でリアリティがある。消耗したステフェンを救ったものは友人メドレンのアドバイスであった。

治療者の依頼を嫌味たっぷりに断るステフェンの演技が魅力的である(155頁)。頑張ることを美徳とする特殊日本的精神論とは対照的である。日本には過労死という翻訳不可能な現象が起きている(林田力「過労死概念の変遷」PJニュース2011年3月3日)。メドレンのように助言する友人とステフェンのように断る勇気が過労死防止になる。

第二に職業差別的発想の克服である。物語世界では資格を持った魔法使いを「魔法使者」、それ以外の能力者を「使者」と呼ぶ。魔法使者の方が単なる使者よりも格上というイメージが抱かれている。実際は魔法使者と使者は能力の種類の相違による区別であり、ある分野では魔法使者よりも使者が優れている。現代社会でも単なる役割の相違を上下にランク付けする発想がある。この固定観念を改めようとするヴァニエルの戦いは現代にも通じるものである。

第三に差別的発想の克服である。ヴァニエルには「共に歩むもの」としてイファンデスと呼ばれる馬の姿をした超自然的存在がいる。外見は馬そのものであるため、知らない人からは知性を持った存在として扱われない。

知っているステフェンでもイファンデスが見かけ通りの存在でないことを自分に言い聞かせなければならなかった。ところが、ヴァニエルの母のトリーサは貴婦人の客人に対するように自然にイファンデスに話しかけた。これを見てステフェンは愕然とする(302頁)。

現代社会にも外見による差別はある。差別はしてはいけないと思うあまり、不自然になることもある。少なくともステファンの境地は心がけているが、トリーサの境地は容易ではない。

上巻のラストで穏やかだった日常が急展開する。ヴァニエルの最後について意味深長な暗示も登場した。魔法使者の最後を語ると思われる下巻に注目である。

『魔法の代償』上巻のラストでヴァニエルは、あまりにあっけなく敵の攻撃を受けてしまった。下巻では攻撃が偶発的なものではなく、陰謀の存在が仄めかされる。同時に敵対勢力の卑劣さも浮き彫りになる。それはヴァニエルの台詞で表現されている。

「ぼくの敵はぼくと面と向かいあおうとせずに、他人を通じてぼくを攻撃してくる」(66頁)

これは東急不動産だまし売り裁判で悪質な不動産業者と闘った経験のある林田力にも思い当たる内容である(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。ヴァニエルは物語世界の中でも圧倒的に強力な魔法使いである。そのような存在と対等に戦える敵キャラクターを安易に登場させるならば物語の世界観を破壊する。敵が卑怯者であることは、ある意味で必然的である。

そして卑怯者である代償として、この敵キャラクターは、読者の印象に残らないまま退場する。バトルものでは敵ながらカッコいいという魅力的なキャラクターを登場させ、主人公を圧倒するシーンを用意する例が多い。これに対して『魔法の代償』では卑怯者には見せ場すら与えないという徹底ぶりである。反対に戦闘能力では足手まといになるステフェンも物語の中ではヴァニエルに同行する存在意義が与えられている。

下巻でも現代社会に通じる含蓄は健在である。魔法使者のサヴィルはテレポーテーションの効果のある門の魔法で体力を消耗してしまう。そのために人間が快適に座ったままで旅ができる技術の進歩を夢想する。これは現代文明の鉄道や飛行機そのものである。サヴィルは、そのような旅は「見知らぬ人々の力量を信じてわが身を委ねることになる」と考える(20頁)。高度に分業が確立した現代文明への皮肉にもなる。

魔法の代償では刊行済みのヴァルデマール年代記で言及されていた様々なエピソードや人物について語られる。それが作品世界を豊かで一貫性あるものにしている。作者が作品世界を大切にしていることが分かる。(林田力)
http://www.hayariki.net/hayariki3.htm#11
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