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林田力『東急大井町線高架下立ち退き』(Driving out Inhabitants under the Elevated Railway of Tokyu Oimachi Line)は東急電鉄による東急大井町線高架下住民追い出し問題を取り上げたノンフィクションである。東急電鉄は東急大井町線高架下(ガード下)住民に一方的な立ち退きを要求している。Tokyu Corp. is driving out inhabitants and tenants under the elevated railway of Tokyu Oimachi Line.

『魔法の代償』ヴァルデマールを舞台としたファンタジー
マーセデス・ラッキー『魔法の代償』は架空の王国ヴァルデマールを舞台としたファンタジーである。原題は『Magic's Price』。ヴァルデマール国を中心とした壮大な物語「ヴァルデマール年代記」の一冊で、伝説的な「魔法使者」ヴァニエルの生涯を描く「最後の魔法使者」三部作の完結編である。ヴァルデマールは中世ヨーロッパのような社会であるが、特別な素質を持った人々が魔法や超自然的な能力を使える世界である。

ヴァルデマールの国王ランディルは原因不明の病に侵されていた。あらゆる治療に成果はなく、若き詩人ステフェンが国王の苦しみを和らげるために連れてこられた。ステフェンの歌声によって国王の苦しみが薄れる。

そしてヴァニエルとステフェンは互いに惹かれあう。上巻は二人のじれったい恋の駆け引きに多くの紙数が割かれている。最後を除いて魔法を駆使した緊迫するバトル要素は乏しい。ヴァルデマール国の日常が綴られているが、その内容には現代社会にも通じるものがある。

第一に過労死である。ステフェンは類い希なる能力のために治療者達の研究材料になるが、治療者達に自分の能力を示し続けて精力を消耗してしまう。優れた能力者でも有限という点でリアリティがある。消耗したステフェンを救ったものは友人メドレンのアドバイスであった。

治療者の依頼を嫌味たっぷりに断るステフェンの演技が魅力的である(155頁)。頑張ることを美徳とする特殊日本的精神論とは対照的である。日本には過労死という翻訳不可能な現象が起きている(林田力「過労死概念の変遷」PJニュース2011年3月3日)。メドレンのように助言する友人とステフェンのように断る勇気が過労死防止になる。

第二に職業差別的発想の克服である。物語世界では資格を持った魔法使いを「魔法使者」、それ以外の能力者を「使者」と呼ぶ。魔法使者の方が単なる使者よりも格上というイメージが抱かれている。実際は魔法使者と使者は能力の種類の相違による区別であり、ある分野では魔法使者よりも使者が優れている。現代社会でも単なる役割の相違を上下にランク付けする発想がある。この固定観念を改めようとするヴァニエルの戦いは現代にも通じるものである。

第三に差別的発想の克服である。ヴァニエルには「共に歩むもの」としてイファンデスと呼ばれる馬の姿をした超自然的存在がいる。外見は馬そのものであるため、知らない人からは知性を持った存在として扱われない。

知っているステフェンでもイファンデスが見かけ通りの存在でないことを自分に言い聞かせなければならなかった。ところが、ヴァニエルの母のトリーサは貴婦人の客人に対するように自然にイファンデスに話しかけた。これを見てステフェンは愕然とする(302頁)。

現代社会にも外見による差別はある。差別はしてはいけないと思うあまり、不自然になることもある。少なくともステファンの境地は心がけているが、トリーサの境地は容易ではない。

上巻のラストで穏やかだった日常が急展開する。ヴァニエルの最後について意味深長な暗示も登場した。魔法使者の最後を語ると思われる下巻に注目である。

『魔法の代償』上巻のラストでヴァニエルは、あまりにあっけなく敵の攻撃を受けてしまった。下巻では攻撃が偶発的なものではなく、陰謀の存在が仄めかされる。同時に敵対勢力の卑劣さも浮き彫りになる。それはヴァニエルの台詞で表現されている。

「ぼくの敵はぼくと面と向かいあおうとせずに、他人を通じてぼくを攻撃してくる」(66頁)

これは東急不動産だまし売り裁判で悪質な不動産業者と闘った経験のある林田力にも思い当たる内容である(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。ヴァニエルは物語世界の中でも圧倒的に強力な魔法使いである。そのような存在と対等に戦える敵キャラクターを安易に登場させるならば物語の世界観を破壊する。敵が卑怯者であることは、ある意味で必然的である。

そして卑怯者である代償として、この敵キャラクターは、読者の印象に残らないまま退場する。バトルものでは敵ながらカッコいいという魅力的なキャラクターを登場させ、主人公を圧倒するシーンを用意する例が多い。これに対して『魔法の代償』では卑怯者には見せ場すら与えないという徹底ぶりである。反対に戦闘能力では足手まといになるステフェンも物語の中ではヴァニエルに同行する存在意義が与えられている。

下巻でも現代社会に通じる含蓄は健在である。魔法使者のサヴィルはテレポーテーションの効果のある門の魔法で体力を消耗してしまう。そのために人間が快適に座ったままで旅ができる技術の進歩を夢想する。これは現代文明の鉄道や飛行機そのものである。サヴィルは、そのような旅は「見知らぬ人々の力量を信じてわが身を委ねることになる」と考える(20頁)。高度に分業が確立した現代文明への皮肉にもなる。

魔法の代償では刊行済みのヴァルデマール年代記で言及されていた様々なエピソードや人物について語られる。それが作品世界を豊かで一貫性あるものにしている。作者が作品世界を大切にしていることが分かる。(林田力)
http://www.hayariki.net/hayariki3.htm#11
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